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FPと相性のよい資格として、宅建に加えて、社労士(社会保険労務士)
があります。
FP資格は取る気十分だけど、他の人と差をつけるのなら、社労士
にも大いに興味があるという方に向けて、
この記事では
●社労士、社労士試験とは何か?
●FPと社労士の試験の難易度の違いは?
●FPと社労士両方の試験の同時受験は可能か?
●FPと社労士のダブルライセンスはキャリアアップ・就職・転職・独立に有利か?
等について解説します。
FPばかりでなく、社労士も関心がある方はぜひ参考にして
ください。
1. 社労士とは
社労士とは社会保険労務士のことで、業務独占の国家資格です。
弁護士・弁理士・司法書士・税理士・行政書士・土地家屋調査士
・海事代理士と共に、職務上、戸籍・住民票等の請求権が認めら
れている8士業の一つでもあります。
1-1. 社労士の仕事とは?
社会保険労務士及び社会保険労務士法人は次の業務を行います。
(1) 労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成
(2)申請書等の提出代行
(3)申請等についての事務代理
(4)都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係
紛争のあっせん手続の代理
(5)都道府県労働局における男女雇用機会均等法、パート労働法
及び育児・介護休業法の調停の手続の代理
(6)個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う
裁判外紛争解決手続における当事者の代理
(紛争価額が120万円を超える事件は弁護士との共同受任が必要)
(7)労務管理その他の労働及び社会保険に関する事項についての
相談及び指導
1-2. 社労士の登録ステップと費用
社労士になるには、社労士試験に合格するだけではなれません。
社会保険労務士名簿に記載され、正式に社会保険労務士として
仕事をするためには、以下のステップが必要です。
●受験資格の確認
↓
●社労士試験合格
↓
●(2年以上の実務経験がない場合のみ)事務指定講習受講
↓
●勤務する住所の都道府県社会保険労務士会に登録申請
↓
●社会保険労務士名簿に名前が記載される。
●都道府県社会保険労務士会に入会。
以上の手続きには次の費用もかかります。(2019年度の場合)
・登録費用 (登録免許税 30,000円、手数料 30,000円)
・事務指定講習(実務経験2年未満の場合)77,000円
・都道府県社会保険労務士会への入会金・年会費
(各都道府県の社労士会により、また開業社労士か
勤務社労士かにより異なる。)
以上の費用は高額(総額 20万円~30万円ともいわれています)
ですので、社労士試験合格後も、すぐには社労士の登録を行わ
ない方も一定数います。
都道府県社会保険労務士会の年会費は、日本FP協会の年会費より
高額です。
社労士試験を受験するなら、合格後のこともよく考えておく必要
がありますね。
2. 社労士試験とは
【試験日】
年1回 8月の第4週の日曜日
【試験科目】
択一式7科目と選択式8科目があります。
●労働基準法及び労働安全衛生法
●労働者災害補償保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
●雇用保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
●労務管理その他の労働に関する一般常識
●社会保険に関する一般常識 (※択一式試験なし)
●健康保険法
●厚生年金保険法
●国民年金法
【受験資格】
学歴、実務経験、厚生労働大臣が認めた国家試験合格者
のいずれかにおいて、受験資格に該当する方は受験できます。
高等学校卒業のみの方は該当しません。
【合格基準】
選択式試験及び択一式試験の総得点と、それぞれの科目ごとに
合格基準点が定められます。
各成績のいずれかが合格基準点に達しない場合は不合格に
なります。
合格基準点は、合格発表日に公表されます。
【合格率】
概ね6~7%程度となっており、合格率が低い試験です。
【難易度】
他の資格と比較した場合、社労士試験の難易度は宅建よりは
高く、行政書士や簿記1級とは概ね同程度、中小企業診断士
よりは少し低いと考えられています。
いずれにしてもFP試験よりは難易度は高いです。
【合格までの勉強時間】
人にもよりますが、一般的には
独学で 800~1,000時間
資格予備校や通信教育の場合は 600~700時間程度です。
何年もかける試験ではありませんが、計画的な勉強が必要です。
3.FPと社労士の試験の難易度の違いは?
社労士はFP資格より難易度が高いです。
FPの中でも最難関のFP1級試験の合格率は、学科が10%程度、
実技が80%程度ですが、社労士試験の合格率は6-7%です。
4.FPと社労士両方の試験の同時受験は可能か?
FP試験の6つの科目のうち、ライフプランニングの一部である
社会保険に関する事項が、社労士の試験科目と重なります。
それ以外は共通の科目がありません。
従って、FP1級と社労士両方を同時並行で勉強して、一気に両方
の合格を目指すのは、勉強する科目数が多くなり、勉強時間
もかかりすぎるため、おすすめしません。
両方の資格をめざすのであれば、おすすめはまず社労士を取得
し、次にFP1級を取得する方法です。
社労士取得後であれば、社会保険に関する学習はせず、他の
FPの科目の勉強に集中できます。
FP1級の試験は年に3回実施されますが、社労士試験は年1回
ということもあり、社労士試験の優先が望ましいです。
但し、社労士試験は難易度も高く、長時間の勉強時間も必要
になるため、時間がとれない方は、FP1級取得を先にする
という方法もあります。
FP資格のみでとりあえず独立をする方は、他の社労士と
業務提携すればよいでしょう。
5.FPと社労士のダブルライセンスはキャリアアップ・就職・転職・独立に有利か?
FPと社労士のダブルライセンスは、特に社会保険の分野で
専門性を発揮できるので、キャリアアップ・就職・転職・独立に
大いに役立ちます。
5-1. 現職でダブルライセンスを活かす方
社労士を持っていると、企業内社労士として、特に人事や総務
分野で活躍できます。
そこにFP資格が加われば、さらに会社から認められ、重宝
されるようになるでしょう。
独立をめざさないのであれば、FP1級でなく、FP2級でも十分
会社員として活躍できます。ダブルライセンスにより、
昇格・昇級・昇進の可能性もあります。
5-2.就職、転職をめざす方
FP(2級でも可)と社労士を両方持っていれば、就職や転職
の際に有利です。
社労士なら総務や人事の分野でアピールできます。
FP2級以上であれば、経理や営業の就活に利用できます。
両方持っていることで、単独資格の人と差をつけることも
できます。
5-3. 独立系FPをめざす方
FP資格で独立するのなら、FP単独資格よりも、ダブルライセンス
が断然有利です。
他のFP事務所と差別化ができます。
まず社労士として独立し事務所を持ってから、FP資格を取得
する方も多いです。
社労士+FP資格で独立するのなら、特に社会保険に強い事務所
としてアピールできます。
社労士は業務独占の国家資格ですから、資格者にのみ認められる
書類作成などの仕事ができます。
また、社労士としてお付き合いする中小企業のオーナーなどに
相続や事業承継など、お金に関するアドバイスもできるので、
仕事の幅も広がります。
6.まとめ
社労士とFPのダブルライセンスは、特に社会保険の分野に
おいて、会社員としても、独立しても多いにメリットが
あります。
しかし、社労士はFP1級や宅建よりは難関資格で、試験合格までの
勉強時間も長いので、本気になって着実に勉強する必要が
あります。
ただ、合格まで何年も要する超難関試験ではなく、正しい方法で
学習すれば1年で合格することも可能です。
独学が困難であれば、資格予備校や通信講座の利用も
できます。
FPとして仕事をするのなら、他のFPより1歩前を行くため
にも、勉強時間が取れる方は、社労士に限らず、
ダブルライセンスをめざしてはいかがでしょうか。